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ウェディングドレスに自然美を。数式にインスピレーションされた松居エリ氏の作品集「感覚する服」が新しい世界を拓く。
2016年の6月に1つの作品集が出されました。ウェディングドレスのデザイナーとして有名な松居エリさんの「感覚する服」です。
松居さんは2010年頃より、カオスやフラクタルなど自然に現れる数式や、それからつくられる幾何学模様をヒントに多くのデザインを行ない、今やファッション業界で大きな支持を得ています。
これまでにない、ファッション×サイエンスの境地に、世界中から「美しい!」「かわいい」「着てみたい」「彼女のデザインはいつも最先端!」などの声が寄せられています。
松居エリさんはもともと、パズルやミステリーのような謎解きは好きではあったものの、学校の授業で受ける数学は嫌いだったと言います。そんな松居さんが科学に興味を持ったきっかけは、一緒に働く人の中に科学好きの人がいたことなんだとか。
科学に興味をもつようになった松居さんは、科学者たちが謎解きに向かうプロセスに関心を持ちました。緻密な計算の上に1つずつ積み上げて行く方法が、新鮮だったと言います。
当時、アートの世界は「感性」がもてはやされ、科学に代表されるような「理論」は対局のものと見なされていました。理屈から考えて作ったデザインはそれまで評価されず、松居さんは悩んだ時期もあると言います。
そんな中、理論的に計算を進めて行く科学者たちが、大胆に「ひらめき」を用い、さまざまな「発想」を理論の中に盛り込んでいたことに、自らの活路を見出したのです。
松居エリ氏が初めて科学者とコラボレーションした作品をつくったのは2010年のこと。東京大学の数理工学を専攻する合原一幸教授が編纂した「社会を変える驚きの数式」を読み、すぐさま合原教授に連絡を取ったと言います。
「社会を変える驚きの数式」では、経済や通信のような現在の社会を支えているものから、風や水、砂の上に作られる模様のような自然のものまで、数式を使ってその動きを表すことができることを紹介していました。
松居さんと合原教授の初のコラボレーションは「カオス」現象を解析するために描かれるグラフをドレスにしたものでした。ここでドレスのヒントとなったカオスを生み出す数式は、生き物の個体数の変化を追いかける数式なんだそうです。
これは大まかな人口の変動にもあてはめられると考えられています。人口の変動の仕方は出生率や死亡率によってそのふるまいが変わってきます。
ある条件では、出生率と死亡率がつりあって、人口が一定になるということもあれば、バランスが崩れると多くなったり少なくなったりを繰り返すこともあります。また、ある条件を満たすと、完全に予測不可能になることもあるそうです。
この予測不可能性を「カオス」と言います。出生率や死亡率は社会の変化や医療技術の発展で変わります。条件が一定しないところが、現実の人口予測を更に難しいものにしているようです。
まさか、そんな数式が、ドレスに生まれ変わるなんて、一体誰が考えたでしょうか。
このドレスを皮切りに、ドレスの裾の形や、フレアの曲線など、様々なところに数式から得られる形を、松居さんは取り込んで行きます。
特に、松居さんを有名にしたのは数式に裏打ちされた、独特のウェディングドレスです。2016年にはこれまでの数々のウェディングドレス作品を中心に「感覚する服」という作品集を出版しました。
これは松居エリさんの集大成ともいえるもので、科学のみならず、哲学的にも「服とは何か」を考えぬいて作られたデザインの数々が納められています。
また、裾の形だけでなく、人の顔を大胆にあしらった服や、脳の皺を全身で表現したワンピースなども存在しています。
また、数学で有名なクラインのつぼや、地球科学のプレートテクトニクス理論、心電図のようなものも、彼女にかかればあっという間に美しいドレスへと変貌を遂げるのです。
彼女の斬新なデザインは世界的にも高く評価されており、海外の人からも絶賛する声があがっています。
松居さんの作品にはウェディングドレスだけでなく、これは着れるのかしら?と思われる芸術的すぎる作品も数多くあります。しかし、どの作品も生き生きとし、動きのあるものも少なくありません。
過去に開催されたファッションショーでは多くの人を魅了したことでしょう。また、ウェディングドレスは白いものが多いですが、赤やピンク、青といった様々な配色を施されたドレスもあります。
世界のファッション業界からも、科学業界からも彼女のデザインのファンは多いようです。ファッション×サイエンス。また1つ新しい境地を開拓した人が日本人であったということは、日本人としては嬉しい限りですね。
(参考)http://www.tokyoweekender.com/2011/05/the-dress-scientist/
さすがコメントにイタリアやフランスが多い。特に何がすごいかわからないけど、どんなものにもファンがいるってことがわかった。