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近年、個人で太陽光の家庭用発電や売電をする方も増えていまが、交通手段への利用はまだ研究段階です。そんな中、スイスの太陽光発電船は世界一周航行の偉業を達成しています。
太陽光発電のみで世界一周航行を達成したのはトゥラノール・プラネット・ソーラー号(以下、トゥラノール号)です。
この船名はイギリスの作家J・R・R・トールキンの名作で映画化もされた「指輪物語」(ロード・オブ・ザ・リング)で出てくる「トゥラノール」(太陽の力)に由来しています。
このプロジェクトはスイス人冒険家のラファエル・ドミヤン氏の発案の下、ドイツの事業家のイモ・ストローハー氏の出資とスイス政府の協力で行われました。
このため、トゥラノール号はストローハー氏所有のスイス船籍となっています。2年間かけて建造された費用は約24億円だそうです。
トゥラノール号は世界最大の太陽光発電の実証実験用ボートです。流体力学研究の権威とされるニュージーランドのLOMOcean Design社が設計を、ハンドメイドのヨットで実績のある独Knierim Yacht Club社が製造を担当しています。
また太陽光パネルはスポンサー企業の米サンパワー社が提供しています。
長さが31mで幅が15mという平べったい船体ですが、その広いデッキ(512平方メートル)にはソーラーパネルがびっしりと貼られています。動力は太陽光発電のみです。太陽光発電だけで最大26kmの速度で航行できます。
風洞実験も行い、流体力学と空気力学を応用した水・風の抵抗を最小限に抑えた理想的な形になっています。また実験後は高級ヨットに改造することを考慮した設計です。
海のない内陸国なのにスイス船籍??と疑問に思う方もいるかもしれません。ちょっとスイスの国柄についてお話しましょう。スイスは国民皆兵の軍事国家で、各家庭には自動小銃まで貸与されているのです。
権謀術数の渦巻く欧州で独立を保ってきた外交術もありますが、それを後押しするだけの軍事力と覚悟を持っています。要塞化された国土に侵攻されれば、焦土作戦も辞さないのです。
スイスに海はありませんが、2つの湖はドイツ・フランスと国境を接しています。ここには50籍近い商船と水軍があります。これは敵の侵入を防ぐだけでなく、食料や物資の供給を確保する安全保障上の理由からなのです。
海で航行しているスイス船籍の商船は沢山あります。意外かもしれませんが、世界第ニ位の海運会社はスイス企業なのです。
またスイスは環境技術立国としても知られています。スイス国内に起因する公害はほとんどありませんが、国境が陸続きなので周辺国の公害はスイスに直結する問題なのです。
その解決に積極的に取り組んでいます。スイスは世界初の有人ソーラー飛行機「ソーラー・インパレス」のプロジェクトにも参加しています。
トゥラノール号は2012年に史上初の太陽光発電のみの世界一周を達成したことで世界的に注目を浴びます。
2010年9月に地中海のモナコを出港し、モロッコ、アメリカ、パナマ運河、ガラパゴス諸島、香港、インドイ、UAなど西周りで航海を続け、世界各地の港で歓迎されます。そして出発から584日後の2012年5月に無事帰港しました。
GPSやレーダー、無線など最新の機器を備えていてはいますが、太陽光発電のみの世界一周航行はマゼラン艦隊以来の快挙と言えるでしょう。
このトゥラノール号の偉業には世界中が注目していました。
トゥラノール号はあくまでも実験船であって、まだ大きな課題が残されています。
ソーラープレーンやソーラーカーにも共通して言えることですが、動力が太陽光であるが故に天候に左右されてしまう点です。ちょっとした天候で欠航になったり、遅れたりするようなら実用的ではありません。
これを解決する技術は日本が持っています。バッテリーへの蓄電技術(リチウムイオン電池)です。いいコンディションでたっぷりと蓄電できれば、夜間や悪天候の時でも安定して航行可能になるでしょう。
トゥラノール号も8.5トンのリチウムイオン電池を使っています。より小さく、より高性能という日本のお家芸が地球を救うことになるかも知れませね。
(参考)https://en.wikipedia.org/wiki/T%C3%BBranor_PlanetSolar
http://www.planetsolar.org/
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2405853/The-worlds-largest-
SOLAR-boat-powered-809-panels-Eco-friendly-vessel-breaks-world-record-
crossing-Atlantic-just-22-days–completely-silent.html
ソーラーパネルが無造作に貼ってあるような感じだけど、もう少しうまくデザインできなかったのかな?でも世界一周はすごい。