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1983年公開の大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」は当時大きな話題になりましたが、今でも世界中で根強い人気があります。その作品のテーマ、キャスト、そして音楽などはその後の映画界にも大きな影響があったのです。
「戦場のメリークリスマス」の原作は大英帝国の旧植民地・南アフリカで生まれたローレンス・ヴァン・デル・ポストの小説がベースになっています。彼自身が植民地の支配階級として育ち、若い時に日本旅行をしています。
第二次世界大戦ではイギリス陸軍の将校としてインドネシアに派遣されます。ここで日本軍に降伏し、捕虜となるのです。つまり、彼自身のインドネシアでの捕虜収容所での体験が基になっています。
主要登場人物の設定もそれぞれです。捕虜収容所所長のヨノイ大尉は陸軍大学校出の若きエリートです。しかし、軍部クーデターの2.26事件では同志と決起できず、どこか死に場所を求めているようにも感じます。
イギリス上流階級出身のセリアズ少佐は社会では弁護士、戦場では英雄ですが、完璧さを求めるあまり、保身のため障害者の弟を見捨てた過去を持ちます。
捕虜側の通訳・ローレンス中佐は田舎大学の出身、捕虜収容所の古参のハラ軍曹は叩き上げ軍人です。
ローレンス中佐の視線を通じて、戦争による国家の対立だけでなく、文化や人種、民俗、階級、偏見への対立を描いています。
キャスティングでは、日本軍で坂本龍一やビートたけし、イギリス軍でデビッド・ボウイやトム・コンティが出演しています。
坂本は後に米アカデミー賞を総ナメしたベルナルド・ベルトルッチ監督作品「ラスト・エンペラー」でも好演しています。
たけしは監督・役者として映画での活動を広げ、自らが監督・脚本・主演を務めた「HANA-BI」ではベネチア映画祭の最高賞・金獅子賞を受賞しています。
また映画のサントラもとても人気です。作曲を担当した坂本は伝説のテクノバンド、イエロー・マジック・オーケストラ(Y.M.O)のメンバーでしたが、この作品以降は映画音楽でも活躍していきます。
「ラスト・エンペラー」では日本人初の米アカデミー作曲賞を受賞しています。この「戦場のメリークリスマス」の映画やメイン曲には世界中から絶賛のコメントが寄せられています。
作中のラストでは日本の敗戦で全ての立場は逆転します。「生きて虜囚の辱めを受けず」の日本軍の信念を持っていたハラ軍曹は捕虜となり、処刑の前日にローレンス中佐と面会します。
かつてハラ軍曹はクリスマス特赦でローレンス中佐の命を救いますが、ローレンス中佐は彼の意思に反してハラ軍曹を救うことができません。この矛盾に満ちたエンディングはとても印象深いです。
「戦場のメリークリスマス」はカンヌ映画祭(1983年)の最高賞・パルム・ドールの最有力候補でありながら、受賞を逃しています。しかし、この作品がその後の映画界に与えたインパクトは絶大なものでした。
ハリウッド映画のようにセクシーな女性や派手な戦闘シーンは一切描かれませんが、これからも名作として語り継がれていくことでしょう。
(参考)http://warmoviebuff.blogspot.jp/2012/11/forgotten-gem-merry-
christmas-mr_18.html
今見るとすごいキャスティングだ。このサイトでよく昔の映画が話題になるけど、どれもいい映画ばかりそうなので見たいとは思うけど、まだどれも見れてない。
正直役者の演技は大根だけど、それを越えるエネルギーがこの作品にはある。
だから名作として後世に残っているんだろうね。
エンディングシーンとエンディングテーマしか知らないけど、名曲だ。
今更ながら観てみようかな。
この年のカンヌは、楢山節考が獲ったんだよね。
黒澤監督もまだ現役だったし。
日本映画が凄い時代だった。
※3
自分としては日本映画は1970年代に終わっていたと思う。
大衆の娯楽としてはハリウッドに勝てなくなっていた。
仕方なく芸術作品のようなもので生きながらえていただけだと思う。
黒沢明も芸術作品に移行してから微妙な監督になっていた。
でも戦場のメリークリスマスは好きだよ。
娯楽映画とは言い切れない、でも反戦映画でもない。
戦争映画なのに戦闘シーンがない。ゲイ描写が多い。
アラビアのロレンスと一緒で女性が登場しない。
表面上のメッセージ性は薄いけど、個々のエピソードのメッセージ性は強い。
捕虜収容所が舞台なのに神秘的な音楽。
こんな不思議な映画なのによくまとめられているよ。
こんな映画は二度と出ないだろうな。特殊すぎて。
数回観たが、良作だと思うが大島監督の演出は素人みたいなところがある。
「御法度」なんて途中で観るのやめた。
大島監督は素人使うの好んでいたけど坂本龍一は役者としてはどうみてもはっきりとダイコンだった、とはいえまあボウイにしてもたけしにしても演技力よりそのオーラでの起用とみるのが適当だしね。
この映画でわかることは坂本氏が一流の音楽家だということ。
たけしと坂本龍一が撮影裏話として、役者じゃないから演技に文句いわれ
戦争という中での東洋と西洋の出会い
楢山節考の緒方拳がハラ軍曹役をやる予定だったと考えたらスゲえな
本当に哲学的な深い映画です。
原作「影の獄にて」のなかの心理学にある影をも描写しているのではないか。俘虜に対して粗暴なハラが最後に純粋無垢な表情を見せる。何かが落ちたように。彼をそうさせたのは何だったのか。極限の中の人間模様を描いている。