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先ごろ、ベルギー・ブリュッセルを拠点とする労働組合の国際組織、国際労働組合総連合(ITUC)がグローバル・ライト・インデックスを公表しました。グローバル・ライト・インデックスとは全世界における労働者の権利指数を示したもの。簡単に言えば、それぞれの国で労働者の権利が尊重されているかどうかを数値化したものです。
調査項目は全部で97あり、国際人権法に基づいて結社の自由、団体交渉、ストライキ権など、労働者の権利が守られているかどうかが査定されます。97項目で違反があるごとに1点が与えられ、ポイントが少なければ少ないほど労働者の権利を保障している国と見なされるわけです。獲得ポイントに応じて各国は6段階の(5+、5、4、3、2、1)評価を受けます。
139カ国および地域が対象となったこの調査で違反がひとつもなく完ぺきだったのがデンマーク。同様に獲得ポイントが少なく評価1と査定されたのはイタリア、フランス、ドイツなど17カ国でした。
これらの国々では「労働権が基本的に保証され、労働者は政府や企業と共に自らの権利を自由に結社し、擁護することが可能。団体交渉を通じて労働条件を改善することもできる。労働者に対する違反が皆無とは言えないが習慣的には発生していない」そうです。
労働者の権利が若干阻害されているという評価2のグループに入ったのは合計26カ国で、日本、ハンガリー、ニュージーランド、スイスが名を連ねています。評価1の国に比べて「特定の権利に対して政府や企業による攻撃が繰り返されており、より良い労働条件を求めた闘いを弱体化させている」とのこと。
「政府や企業が習慣的に労働権に干渉している、あるいは、労働権の重要な側面を完全に保障できておらず、法令や特定の慣例が欠如しているため権利違反を頻発させている」として評価3に査定されたのはオーストラリアやイギリス、カナダを含む34カ国でした。
先進国ながらインドネシアやイラン、メキシコ、イエメンなどと同じ4の評価を受けたアメリカは「組織的な違反があるか、権利を訴える労働者の声をつぶしている」ことが示唆されています。
ITUCが「労働者にとって世界最悪の国」と説明した評価5の査定を受けたのは中国、インド、フィリピン、マレーシア、トルコ、ギリシャなど24カ国。「特定の権利が法律で詳しく説明されている場合があるものの、実質的に労働者がそれらの権利を生かす術はなく、独裁的な体制と不公平な労働慣習にさらされている」というのが評価理由です。
同じグループに分類されたカンボジアは多くの公務員に労働法が適用されておらず、組合の代表者を選出する権利に関しても不当な規制があるとのこと。2013年には適切な賃金の支払いと適切な労働条件を求めたデモ隊に対し、政府が破壊的な武器を用いて応戦する事件もありました。
評価5+を得たのは中央アフリカ共和国、リビア、パレスチナ、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、ウクライナの8カ国ですが、これらの国々では紛争が頻発し、法の原則が完全に破綻しているため、労働者が法的に保護される状態にないとしてこの評価を受けたそうです。
とりわけ民族宗教闘争に直面する中央アフリカ共和国は民兵の紛争が続き、数千人が命を落としています。国連からは大量虐殺の危険性が高いと警告され、安全保障理事会も政権崩壊に強い懸念を表明していることから、5+と査定されました。
ITUCによると、最低でも9カ国で労働者に対する脅迫として殺人と誘拐の手段が用いられているとのこと。労働条件の改善を交渉しようとした労働者を退けたり解雇したりした国と地域は53もあったそうです。さらに、少なくとも35カ国で、労働者が民主的権利、適切な賃金、安全な労働条件、仕事の安定性などを求めて抗議した結果、逮捕あるいは収監されたと報告されています。
このニュースを見た人々は北欧の高い水準を称えつつも自国の評価の低さに驚き、アメリカの評価4に対しては多かれ少なかれ納得する意見が多いようです。
13時間がいつもかな。14時間がときどき。15時間っていうのはあまり聞かない。勤務終了の数秒前に緊急出動の要請があれば絶対に出動しなきゃいけない。仕事柄、睡眠時間もほとんどないし、家族との時間は聞かないでくれ。
労働環境が悪い、と言われがちな日本ですが、評価3以上の国数の多さを考えると、この評価内容を見る限り世界の中では“恵まれた環境”なのかもしれません。確かに、サービス残業、長時間労働といった労働環境・条件など、労働者の権利に関する問題は多くあります。しかしながら、少なくとも権利を主張して逮捕・収監されることはなく、勤務中に殺人や誘拐の脅威にさらされることもありません。
(参考)http://www.ituc-csi.org/new-ituc-global-rights-index-the
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/may/22/
worker-world-index-employment-rights-inequality
http://www.gmanetwork.com/news/story/363089/economy/business/
phl-one-of-the-worst-places-to-work-in-ituc-labor-rights-index
国によって考え方はそれぞれだが、労働環境を世界的に見て比較した今回の調査はとても面白いデータだと思う。予想どおり先進国ほど労働者に優しく、日本より良い評価を得ているEUはさすがだと思う。