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シロアリと言えば家を食い荒らす悪役のイメージがあります。私たち地球にとってはむしろ益虫なのです。シロアリは世界中に生息していますが、中にはアリ塚と呼ばれる巨大な建造物を作る種類もいます。
ところで、アリとシロアリは見た目も生態も似ているので同種と思われがちですが、アリはハチの仲間で、シロアリはゴキブリの仲間なのです。
アリは蝶のように幼虫と成虫の形が全く異なる完全変態ですが、シロアリは生まれた時から親とそっくりです。
色の違いを指摘される場合もあります。確かに日本のシロアリはその名の通り白っぽいですが、赤道付近のシロアリは黒または茶褐色のものも多いのです。
ハチとアリの多くは巣を作り、集団として社会的な活動をすることで知られていますが、シロアリも女王を中心にコミュニティを形成し、王や兵アリ、働きアリと階層化されています。シロアリは単体では生きていくことはできません。
害虫とされるシロアリですが、家に被害を与えるのは下等シロアリと呼ばれる仲間です。ほとんどは高等シロアリと呼ばれる仲間で、生態系を維持する上で重要な役割を果たしています。
多くのシロアリは地中に巣を作りますが、中には地中に穴を掘らずに、どんどん土を盛っていきながらアリ塚を作る種類もいるのです。大きなアリ塚になると高さが10メートルに達するものもあります。
アリ塚はアフリカなどの高温で乾燥した地域に作られることが多く、内部では100万~200万匹ものシロアリが生活しています。
なぜシロアリは苦労してアリ塚を作るのでしょうか。まず、地面よりも高い位置にあると雨や川の氾濫などから巣を守ることができます。また適切な住環境を維持できるメリットがあるのです。
アリ塚にはたくさんの穴が空いていますが、これらの穴は出入り口の役割だけでなく、ダクト機能も持ち合わせています。そのため内部の気温と湿度はほぼ一定に保たれています。
外部環境の変化に合わせて、シロアリはダクトや構造をリフォームしているのです。
意外かもしれませんが、シロアリは人間以外で唯一農業を行う生き物なのです。彼らは巣穴でキノコを栽培しています。
キノコを食べる訳ではなく、キノコが木や草のセルロースと呼ばれる硬い成分を分解してくれるので、シロアリは分解された部分を食べているのです。シロアリが運んできてくれた食材をキノコが調理してくれるというイメージです。
女王シロアリといえば、なんだか威張っている感じがしますが、その役目は非常に重要です。その大きさは人の指ほどの大きさまで成長していて、1日に卵を5万個産む女王もいるのです。最長15年の生涯で生み続ける卵は数億個。
世話役のシロアリが女王の体を清潔に維持し、食事も女王へ口移しで運んでくれます。何年間もひたすら産み続ける現実を知ってしまうと可哀想に思えます。アリ塚の数百万のシロアリたちは全て女王の子供なのです。
ユニークなアリ塚の中でも、いま世界が注目されているスポットがコンゴ民主共和国(中部アフリカ)のミオンボ・ウッドランド地区にあります。
ベルギーのヘント大学の研究チームはこの一帯の4つのアリ塚を調査しました。内部の成分を放射性炭素年代測定で調べた結果、最古のものは2200年ほど前に建設が始まっていたのです。
このアリ塚は既に役割を終えていますが、500~800年前まで稼働していたことが判明しています。つまり同じアリ塚を年世代ものシロアリが1000年以上も維持・拡張してきたのです。別の稼働中のアリ塚は750年ほど経っていました。
これらの大アリ塚に対して、多くのコメントが寄せられています。
高度に社会化された巨大なアリ塚は巨大都市や国家に例えられることが多いですが、むしろ細胞や臓器でできている人間のような存在かもしれません。女王や王は生殖器官などとして捉えるとわかり易いです。
人間のように高度な指令を出す脳のような部分はないようです。それでもシロアリ同士はフェロモンを通じて相互にコミュニケーションをとっているのです。個の集合体が統一した意思を持って行動しているなんて不思議です。
シロアリの大きさを人間に対比して計算すると、アリ塚の高さは1500mほどになるそうです。人工の建造物で最も高いブルジュ・ハリーファ(ドバイ)でも828mしかありません。
アリ塚は、さながら旧約聖書「創世記」に出てくる「バベルの塔」のようです。電気などを使わずに、数百万匹もの生き物が快適に生活を続けていけるなんて凄いと思いませんか。ある意味、人間よりも遥かに進化しているとも言えるでしょう。
(参考)http://www.bbc.com/earth/story/20150729-2000-year-old-termite-
mound-found?ocid=twert
http://news.nationalgeographic.com/news/2014/07/140731-termites-
mounds-insects-entomology-science/
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-3185089/2-200-year-old-
termite-mound-discovered-Feat-insect-engineering-abandoned-decades-ago-
claim-scientists.html
シロアリがゴキブリの仲間だったなんて。しかも農業やってるなんて初めて知った。日本のシロアリは悪い印象しかないけど、なんだかイメージが変わったかもしれない。